大人の色気と普遍性
【#020 接吻 -kiss- / ORIGINAL LOVE (93年)】 の考察 /2019.02.21_wrote
渋谷系の代表格と謳われたORIGINAL LOVEの5枚目のシングル。
91年のメジャーデビュー前からその音楽性に対する評価は高く、
田島貴男は90年まで小西康陽の誘いでピチカートファイブの2代目ボーカリストも掛け持ちしていた。
この曲が、当時の10代にどのように映ったのかを考察してみたい。
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<大人の世界の片鱗>
中学生時代。
姉の部屋に一枚のCDがあった。
「SUNNY SIDE OF ORIGINAL LOVE」
セピア色の写真の中で、
それまで筆者が知っているような、
テレビでワイワイと派手に騒ぐアーティストとは違う、
長身のシティーボーイがこちらをすっと見て立っている。
自分の部屋に移動し、CDを再生してみる。
あらゆるジャンルにルーツを持つ田島貴男のセンスが、
わかりやすいヒット曲ばかり聴いていた耳にガシガシ押し迫る。
渋谷系という言葉など露知らず、
オリコンチャートの上位に入るヒット曲しか知らない筆者にとって、
その出会いは大人の世界の片鱗を覗き見するような感覚だった。
そんな世界の入り口として、
ポップで耳馴染みのいい挨拶がわりの一曲がまさにこの曲、接吻だった。
長く甘い口づけを交わす
深く果てしなく あなたを知りたい
fall in love 熱く口づけるたびに
痩せた色の無い夢を見る
都会的で、知性的で、艶っぽい。
うまく咀嚼はできなかったが
それは初めて飲むエスプレッソのような味わいだったように思う。
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<大人のキスとおしゃれな賢者タイム>
接吻・・・。
言葉の意味は誰しもがわかるのに、
この曲がなければなかなか聞くことのない言葉だ。
歌詞にも出てこないこの言葉こそが、
普通のキスとは違う、大人の世界に誘うのだ。
「才能」と「自然体」のバランス
【#019 Heaven’s Kitchen / Bonnie Pink (97年)】 の考察 /2019.02.1_wrote
Bonnie Pink(現在は大文字表記)の4枚目のシングルであり、トーレ・ヨハンソンのプロデュースでの2枚目のシングル。
自身初のオリコンチャート入りを遂げることになるこの曲、実は本人が生まれて初めてつくった曲と言われている。
この曲が、当時の10代にどのように映ったのかを考察してみたい。
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<椎名林檎も嫉妬する才能>
名前があって
そこに愛があって
たとえ一人になっても
花は咲いている
97年。
ラジオのパワープレイ。
一撃でノックアウトされた。
時折気だるく吐き捨てるような台詞調の英詞。
不安定に上下し歌い終わりに下がる音階。
同じ国の文化に触れて育ったとは思えないほど、
自由で異質なその音楽に戸惑いすら覚えた。
それがBonnie PinkのHeaven’s Kitchenである。
真っ赤な髪色のショートヘア。
誰にも媚びない強烈な個性。
「自分のやりたいことを先にやられてしまった」
と椎名林檎がデビュー前に語ったとされるその才能は、
邦楽の域を軽々と越えているように思えた。
Heaven’s Kitchenは
危険地帯Hell’s Kitchen(そこに迷い込むと身ぐるみはがされ
何もかも食べ尽くされてしまう)の対義語としてつくられたらしいが、
そんなことは当時ティーンの筆者としては知るはずもなく。
「最初は何を歌っているかすらわからない歌」なのに、
耳が放っておくことができない。そんな強い引力があった。
しかし、20歳ちょっとで人生初めてつくった曲がこれってどんな才能だ…
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<天才と繊細と>
経歴を調べると面白い。
学園祭で、部活の活動実態が必要だからという理由でバンドを組み、
そこから人づてに噂が広まりデビューし、
他人の書いた曲の中に自分に合う曲がないという理由で作詞作曲を始めた*1
というのだから、
これを才能と言わずに何と言おう?
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アンバランスな魅力とガールポップ
【#018 Over Drive / JUDY AND MARY (95年)】 の考察 /2019.02.0_wrote
92年にデビューし、2ndアルバム「ORANGE SUNSHINE」のスマッシュヒットで
メジャーシーンに躍り出たJUDY AND MARY7枚目のシングル。初のオリコンチャートTOP10入りを果たした。
この曲が、当時の10代にどのように映ったのかを考察してみたい。
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<軽音楽部の理想イメージ>
ちょっとワルくてちょっと健全。
ちょっとパンクでちょっとロック。
そして、どこまでもポップ。
当時中学生だった世代にとって、
JUDY AND MARYは、
存在そのものがファッションアイコンだった。
走るー 雲のー 影をー
飛び越えるわ
夏のにおい追いかけて
無骨な白いつなぎの中に見えるヒョウ柄の水着。
そして時折見せるサングラスやヘルメット姿。
中学生の勝手な想像だが、
専門学校の文化祭前のような楽しさや、
男女仲良い軽音楽部の理想イメージが、
MVの中から圧倒的なエネルギーで迫ってくる。
そして、その中心にいるのがボーカルYUKIだ。
ボーイッシュさと少女性のアンバランスが見せる、
ちょっと悪戯好きでやんちゃな気まぐれ感。
オタサーの姫的存在の上位互換を
数億回繰り返してもたどり着かないであろうと思えるくらいに、
バンドの中で、紅一点のボーカルは
どこまでも自由闊達で、歌手の域を超えてチャーミングだった。(今でもですけど)
余談だが、筆者がJUDY AND MARYを知ったのは、
Over Driveの1枚前のシングルに収録されている自転車が
明治製菓「ポイフル」のCMに使われていたからだ。
ここから25年・・・いやはや、ブレない。
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純朴アーティストの日本語感覚
【#017 冬がはじまるよ / 槇原敬之 (91年)】 の考察 /2019.01.31_wrote
3枚目のシングル、「どんなときも。」の爆発的ヒットで一躍時の人となった槇原敬之の4枚目のシングル。
サッポロビール「冬物語」のCMソングとして使用され、以降時代を超えて定番の冬ソングとなっている。
この曲が、当時の10代にどのように映ったのかを考察してみたい。
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<純朴アーティストという特異性>
91年。
ロックは不良のやるもの。
そんな時代は終わりを告げようとしていたが、
それでもアーティストというのは、
オシャレだったり、カッコつけてたり、少しチャラい印象があったり、
どこかウェイウェイしている雰囲気や
なんかスクールカースト上位イメージというか、そういう節があった。
「どんなときも。」のヒットによる槇原敬之の登場は、
飼育係のメガネくんが突然マラソン大会でトップを取るような衝撃だったように思う。
(大ヒットしましたね)
そして、大ヒット収まらぬ中、リリースされたのがこの曲である。
8月の君の誕生日
半袖と長袖のシャツをプレゼントしたのは
今年の冬もそれからもずっと僕らが
一緒に過ごせるためのおまじない
何だろう。
槇原敬之の純朴100パーセントの声から放たれる純朴100パーセントの歌詞。
きっと筋斗雲にも乗れるであろう心の清らかさ。
こんな健気な歌を歌う男性は
アーティストという人種のイメージにはなかったのだ。
そもそも、こんなヤツ実在したら、
女性としてはちょっと引くんじゃないか・・・と思ってしまう。
「ねぇ、エミは誕生日、彼氏に何もらったの?」
「えっとぉ、半袖と長袖のシャツ」
「えー何それ?笑」
「なんかぁ、冬もその先も過ごせるためのぉ、おまじない?だって」
「お・ま・じ・な・い~?(爆)」
続きを読む3人の掛け算によるタイムレスな音楽
【#016 Swallowtail Butterfly~あいのうた~ / YEN TOWN BAND (96年)】 の考察 /2019.01.24_wrote
96年公開の岩井俊二監督映画、「スワロウテイル」に登場する無国籍バンドの曲。
映画の登場人物名義による発売ながらシングル、アルバム共に週間チャート1位を記録するなどの現象を起こした曲。
この曲が、当時の10代にどのように映ったのかを考察してみたい。
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<10代だけに刺さる特殊な言語>
飛び交う中国語。英語。カタコトの日本語。
目を背けたくなるような暴力。痛み。貧困。
エキゾチックでありながらも郷愁感漂うディストピア。
R-15指定をギリギリクリアして見た世代としては、
映画「スワロウテイル」の衝撃は凄まじかった。
邦画とは思えぬ大きな世界観。
全体に浮遊するどこか懐かしい匂いのする気怠さ。
時々、目を背けたくなる重々しさを持ちながらも、
それでいて、10代に刺さる、圧倒的なカッコよさ。
おそらく、映画を観た年齢によって受け取り方は大きく異なるだろう。
映像のトーン・キャスト・美術・ストーリー。
すべての要素が若者だけに伝わる言語で、迫ってくる。
逆説的だが、若者以外はわからなくていいと突き放した表現ともとれるこのカルチャー感が、
10代に圧倒的密度を持ったものとして押し寄せるのだ。
その中でも、
この映画における音楽の存在はあまりにも大きい。
世界観を決定づけるSunday Parkのギターに始まり、
そしてエンディングのSwallowtail Butterfly~あいのうた~ まで。
この映画はある種ミュージックビデオとストーリーが合体したような形で進行していく。
そういう意味では
岩井俊二&小林武史の二人の世界観による映画と言ってもいいだろう。
Love Letter、打ち上げ花火とヒットを重ね、
気鋭の監督として注目を集め始めた当時33歳の岩井俊二。
破竹の勢いでヒットを飛ばすMr.Childrenのプロデューサーとして注目を浴び、
前年にMY LITTLE LOVERを立ち上げ自らも表舞台に参加した36歳の小林武史。
岩井俊二の作るファンタジーの中にあるリアリティ。
小林武史の作るキャッチーさと哀愁。
まさに若者文化を代表する二人の感性が混ざり合い、
YEN TOWN BANDは、
映画の枠を超えて羽ばたいていったのだ。
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<Charaという楽器>
映画の中のグリコが、現実世界ではCHARAという歌手であったり、
映画内で他にかかる音源がMY LITTLE LOVERの音源だったり、
劇中のCMがクリスペプラーの声によるそれっぽさだったり。
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アイドルとビジネスの距離
【#015 LOVEマシーン / モーニング娘。 (99年)】 の考察 /2019.01.17_wrote
ASAYANの企画の派生からデビューしたモーニング娘。7枚目のシングルであり、
後藤真希が第3期で加入した直後のシングル。グループ初のミリオンヒットを記録した。
この曲が、当時の10代にどのように映ったのかを考察してみたい。
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<アイドルと楽曲の距離感>
ASAYAN、中期。
番組自体もオーディション企画が続くことで
人気はあったがややマンネリの兆しが見え隠れし、
デビューこそ大成功だったモーニング娘。(以下モー娘。)も、
リリース曲ごとに次第に順位を下げていた頃。
テコ入れが必要だったのは確かだろう。
それが、新メンバー後藤真希の加入及びセンター抜擢であり、
この楽曲、「LOVEマシーン」である。
にゃお〜~~~~ぉおん!
なんという出だしだろうか。
正統派アイドルとしてデビューした「モーニングコーヒー」のイメージからは
到底想像できない悪ノリっぷりである。
ダンスというにはあまりに滑稽なポージングに近い「踊り」。
歌詞というには経済用語と恋愛を無作為に乱立させただけのように読める「言葉」。
そして、ひと世代前を彷彿とさせる「ディスコミュージック」。
正統派アイドルから突如ブチ放たれる、勢い任せのカオス。
MVがテレビから流れたのを見て、
最初は「ぽかーん」となった人がほとんどだったようであろう。
情報量の込み入り具合が、脳の処理速度を超えているのだ。
しかし、まさにそこがつんく♂の狙いだ。
よくわかる直球な王道ソングは、勢いに乗っている時こそヒットしやすいが、
停滞している流れの中でノイズを高め注目度をあげるためには、「魔球」しかない。
魔球に必要なのは、アイドルと楽曲の距離感である。
到底アイドルソングとは思えない、
アイドルイメージから数万光年離れた距離にある楽曲を作り上げることこそが、至上命題だったに違いない。
結果、
モー娘。の起死回生の起爆剤として
世に放たれたこの奇妙奇天烈摩訶不思議な組合せの楽曲は、
世紀末、低迷する日本すら揺るがす起爆剤となったのだから、
つんく♂のプロデューサーとしての感覚には、脱帽するしかない。
そしてもう一人、やはりこの曲はダンス☆マンの才能なしには語れないだろう。
ギター一本のデモからカオス感を保ちながらもセンス抜群のアレンジに仕立てる離れ業。
デモを聞いてから
わずか1日2日でアレンジを加え
つんく♂と一週間の猶予で作り上げたというのだから、
言うまでもなく、必死だったのだろう。
ダンス☆マンの制作秘話を読むと、その片鱗が見て取れる。*1
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<アイドルと日本経済>
歌詞を見ていこう。
語尾のリフレインや
Wow Wow Yeah Yeahなどの投げ込みの印象が強いが、
この曲のリズムを根底で作っているのはやはり日本語部分だ。
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ディーヴァに見るJPOPの分岐点
【#014 情熱/ UA (96年)】 の考察 /2019.01.10_wrote
UAの4枚目のシングルであり、UAという名前を一躍有名にした出世作。
じわじわとロングヒットを続け、UA作品の中でチャートイン最多を数える。
この曲が、当時の10代にどのように映ったのかを考察してみたい。
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<安室奈美恵が歌ったUA>
この曲をヒットさせたのは安室奈美恵だと思っている。
かつて、
三宅裕司、中山秀征や赤坂泰彦の進行のもと、
ある種スナックのような状態で
様々な人たちがその時々のヒット曲を歌うゆるめの音楽番組があった。
その名も、『THE夜もヒッパレ』。
そこに
安室奈美恵with SUPER MONKEY’SやSPEEDなど、
これから売り出したいであろう若手アーティストがサブキャストとして配され、
テレビ出演経験とヒット曲を歌う機会を与えられていた。
96年といえば、
前年から小室哲哉プロデュースにより完全ソロになった安室奈美恵が
トップアーティストとなり、アムラーが流行語大賞を取った年。
「安室奈美恵」という存在は売り出したい若手アーティストという域をとうに越えていた。
さらにはその音楽性においてもちょうどDon’t wanna cryをリリースし
ユーロビートからR&Bへと方向転換が見え始めたタイミングである。
そこで、チャート圏外ながら注目曲として歌われたのが、
まさにこの曲、「情熱」だったのだ。
(いやぁ、youtube無いですねぇ。誰か上げて欲しいものです)
イントロと呼ぶにはあまりに短いドラムを抜けて、歌が始まる。
きっと涙は 音もなく 流れるけれど
赤裸々に 頬濡らし 心まで溶かし始める
スナックのカラオケ的なTV画面の中で
その時間だけが異次元空間のように見えた。
誤解を恐れず言うと、
彼女が自身の歌を歌うよりも、全力に見えたし、カッコよく見えたのだ。
それはR&B色を打ち出したトップアーティストとしての、
本気でいいと思う楽曲に対するリスペクトに思えた。
そんな楽曲が、注目を集めないわけがない。
ネットを探しても見つからので筆者の記憶だけが頼りだが、
この日のTHE夜もヒッパレ放送の翌週、
情熱が一気にチャートを駆け上ることになった(と記憶している)。
夜もヒッパレで楽曲を知った人が原曲に触れることで、今度は、
ヴォーカリストとしてのUAの才能に驚かされることになるのだ。
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<ディーヴァという言葉の浸透>
朝本浩文という才能が織りなす
クラブミュージックやR&Bという言葉だけでは片付けられない、
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ミスチル現象とヒットからの逃避行
【#013 innocent world / Mr.Children (93年)】 の考察 /2018.12.13_wrote
ミスチル5枚目のシングルにして、初のオリコンチャート1位を記録し、その後のミスチルを決定づけることになる曲。
アクエリアスネオ/イオシスのCMのタイアップでもあった。
この曲が、当時の10代にどのように映ったのかを考察してみたい。
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<3曲で、頂点へ>
中学時代。我が家の朝食の席でよく目にするCMがあった。
矢崎建設だったかと思っていたが、Wikipediaで確認したら矢崎総業という会社のCMだった。
このくらいの記憶なのだから取り立てて特徴のあるCMというわけではなかったが、
CMに流れる曲と、そこに記載されている「♪Mr.Children」という文字が気になっていた。
予兆は、あった。
ReplayがポッキーのCMとして使用されたのち、
ドラマ「同窓会」のタイアップとしてリリースされたCROSS ROAD。
さわやかさな曲調と伸びのあるメロディーはそのままだが、
それまでリリースしていた純粋なラブソングとは少し違った、
恋愛を織り交ぜながらも
理想と現実、その先の自分を見つめるような視点は、今のミスチルの原型のように思える。
このCROSS ROADが
ドラマ「同窓会」の終了後も順位をじわじわとあげていき、
異例のロングヒット。
果たして本物なのか?一発屋なのか。
この得体の知れないバンドの次のシングルに対する期待度は高まっていた。
そんな中、
ちょうど溜まったマグマが噴火するように、
突然(といってもいいと思う)世に放たれたのがこの曲だ。
いつの日も この胸に 流れてるメロディー
映像の印象は薄いCMではあったが、
それだけに音楽の印象は圧倒的だった。
私だけではない。
学校へ行けばクラスの友人たちがあちこちで
「ミスチルの新しいの、聞いた?ヤバイ!(←当時はヤバイ!って言葉ないですね)」
「あの、イノ・・・なんたらワールド!」
となるぐらいにCM15秒で日本を釘付けにして見せたのだ。
その後もアルバムAtomic Heart、
6thシングルtomorrow never knowsとモンスターバンドとしての地位を確立することになるのだが、
その間、1年。(※CROSS ROADの発売からtomorrow never knowsの発売までがちょうど1年)
デビューからわずか2年、わずか24歳のシンガーソングライターが、
たった3枚のシングルで音楽業界の頂点へ登りつめたのだ。
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<歌詞にみる多彩な技巧>
ミスチルの歌詞表現の多彩さは目を見張るものがある。
この曲以前のシングルでも、
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笑顔とテヘペロの自己主張
【#012 Eyes to me/彼は友達 / DREAMS COME TRUE (91年)】 の考察 /2018.12.20_wrote
ドリカム9枚目のシングルにして、オリコンチャート初の1位を記録したこの曲。
歌詞の中の「SMILE」をキーワードに展開されたフジカラーのCMのタイアップでもあった。
この曲が、当時の10代にどのように映ったのかを考察してみたい。
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<14歳のSMILEと25歳のSMILE>
こっち向いて笑って
照れないでSimle, Smile, Smile
伸びやかなボーカルと、爽やかな世界観が広がるこの曲。
文字通りドリカムの人気を決定づけることとなった曲だが、
人気に火をつけたのは、このCMだろう。
当時宮沢りえ、牧瀬里穂、とともに3Mとして
人気を博した観月ありさ。
タレント×いい歌。
シンプルなCMだ。
そもそも「伝説の少女」である。ややこしい話など必要ない。
「SMILE」をコピーに、
観月ありさの「SMILE」と吉田美和の歌う「SMILE」が重なり、
タイアップとしては完璧なまでに歌の存在感が強く残る。
SMILEの印象が強く、当時この曲のタイトルを正確にEyes to meと覚えている人は少なかった。
それにしても、観月ありさ、14歳。
なんとも純粋な笑顔である。*1
そんな観月ありさにぴったりのSMILEイメージが、
ちょうどその頃テレビでも見かけるようになった
DREAMS COME TRUEのボーカル本人にもまさにぴったり当てはまるのだ。
吉田美和。25歳。
曲の印象そのままに。
とにかく、大きな口を開けて、笑顔で、伸びやかに歌う人だなぁ。
という印象だった。
(そういえば、TIMEの表紙を飾ったりもしましたね)
そして、
そんな彼女をフロントに二人の男性が支える編成。
歌の中に出てくるさまざまな恋愛模様をそこはかとなく感じさせるような不思議なトライアングル構造は、
のちに「ドリカム編成」という言葉として音楽の域を超え一般化するほどの影響力であった。
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<吉田美和の歌詞世界>
ドリカムの歌詞世界は新鮮だった。
難解で複雑な抽象性を繰り広げるでもなく、
散文的にさまざまな想い情景を散りばめるのでもなく、
基本的に、ひとつのシーンを(一回のデートとか)を平易な言葉で丁寧に描き出す。
青いシャツを着てから出かけて写真を撮るこの歌も、
一見するとなんの変哲もない日記的歌詞になりそうなのだが、
情景と感情/自分の想いと相手の視点/広がる景色と小さな変化。
この自由な往来により、
ひとつのシーンを多面的に描き出し
目の前の情景を圧倒的に豊かなものに変質させてしまうのだ。
*2
*1:観月ありさは実に8年もフジカラーのCMを続けることになる
*2:感覚的には、中央高速を走っているドライブのワンシーンを、気持ちと景色の動きをシンクロさせて描く歌詞が印象的な「中央フリーウェイ」などを書いている松任谷由実の歌詞に近いかも
ダサカッコいいのスタート地点
【#011 ごきげんだぜっ ~Nothing But Something~/ DA PUMP (98年)】 の考察 /2018.12.13_wrote
沖縄アクターズスクール出身のメンバーで構成された初期DAPUMPの4枚目のシングルであり、
プロデューサーである富樫明生がm.c.A.T名義で95年に発売した曲のカバーでもある。
この曲が、当時の10代にどのように映ったのかを考察してみたい。
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<バージョンアップするm.c.A・Tワールド>
富樫明生プロデュースのもと
本人のカバー、
Feelin Good It’s Paradiseでデビューし、その翌年のシングル。
それが、この、ごきげんだぜっ!である。
Love Is The Final Liberty、Stay Togetherと
2曲のオリジナルを立て続けにリリースし勢いに乗っていたとは言え、
4枚目のシングルであるこの曲もm.c.A.T.こと富樫明生が3年前に歌った曲のカバー。
実に再利用率50パーセント!
環境省もびっくりのエコシステムである。
通常カバー曲といえば、
ある程度時間の経った名曲の再解釈だったり、
その歌い手の世界観に合わせて大幅にアレンジ変更を施したりするものだが、
曲調も雰囲気もほぼ原曲そのままである。
それを新しい人が歌うだけで
オリコンチャートに再度送りこむことができるのだとしたら、
そりゃ、ごきげんなものだ。
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