アンバランスな魅力とガールポップ
【#018 Over Drive / JUDY AND MARY (95年)】 の考察 /2019.02.0_wrote
92年にデビューし、2ndアルバム「ORANGE SUNSHINE」のスマッシュヒットで
メジャーシーンに躍り出たJUDY AND MARY7枚目のシングル。初のオリコンチャートTOP10入りを果たした。
この曲が、当時の10代にどのように映ったのかを考察してみたい。
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<軽音楽部の理想イメージ>
ちょっとワルくてちょっと健全。
ちょっとパンクでちょっとロック。
そして、どこまでもポップ。
当時中学生だった世代にとって、
JUDY AND MARYは、
存在そのものがファッションアイコンだった。
走るー 雲のー 影をー
飛び越えるわ
夏のにおい追いかけて
無骨な白いつなぎの中に見えるヒョウ柄の水着。
そして時折見せるサングラスやヘルメット姿。
中学生の勝手な想像だが、
専門学校の文化祭前のような楽しさや、
男女仲良い軽音楽部の理想イメージが、
MVの中から圧倒的なエネルギーで迫ってくる。
そして、その中心にいるのがボーカルYUKIだ。
ボーイッシュさと少女性のアンバランスが見せる、
ちょっと悪戯好きでやんちゃな気まぐれ感。
オタサーの姫的存在の上位互換を
数億回繰り返してもたどり着かないであろうと思えるくらいに、
バンドの中で、紅一点のボーカルは
どこまでも自由闊達で、歌手の域を超えてチャーミングだった。(今でもですけど)
余談だが、筆者がJUDY AND MARYを知ったのは、
Over Driveの1枚前のシングルに収録されている自転車が
明治製菓「ポイフル」のCMに使われていたからだ。
ここから25年・・・いやはや、ブレない。
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<GIRL POPの系譜>
車のCM曲で、夏を感じる伸びやかな印象だが、
ところどころに、不安定さが見え隠れする。
夜に墜ちたらここにおいで…
あなたはいつも
泣いてるように笑ってた
迷いの中で傷つきやすくて
愛しい日々も恋も優しい歌も
泡のように消えてくけど
全体を通じても、
こちらを向いて微笑んだかと思いきや、
次の瞬間には不機嫌に顔を逸らしているような歌詞。
そのアンバランスさこそが最大の魅力だろう。
(グロかわいいという言葉がある時期流行ったが、
JUDY AND MARYのかわいいの中には毒を孕んでいるようなところがある。)
そしてそんな歌詞に魅力を与えるYUKIのボーカル。
少し舌ったらずで甘えた印象を受ける声質。
普通の人だとキンキンしそうなのに、心地よく抜ける高音。
「かわいいこと」は前提にありながら、
決して媚びを売るのではなく、
自由気ままに振る舞う「少女(=ガール)」としての魅力がギュッと詰まっている。
シンディーローパーに端を発し、
NOKKOを経由して
のちにHysteric Blueへと脈々と受け継がれていくガールポップ。
ただ女性が歌うだけという意味でなく、
女性の生き方・振る舞いを全面に押し出した魅力。
JUDY AND MARYは、
まさにその流れのど真ん中で、
日本におけるガールポップの地位を確立させた存在かもしれない。
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<バンド解散と、終わらないもの>
今でも、復活してほしいバンドの筆頭にあがるJAM.
OverDrive以降、ヒットチャートの常連となりながらも、
98年に充電期間に入り、
2000に活動を再開するものの1年と経たずに解散を発表。
トップアーティストの解散は衝撃だったが、
同時に男女仲良い軽音楽部の理想イメージの世界には終わりがあることの象徴でもあった。
その一方で、「ガール」に終わりはない。
YUKIはその後一時的に幾つかのバンドで楽曲をリリースしたのち、
2002年にthe end of shiteでソロデビュー。
そのキャリアはもう18年目に突入することになる。
永遠に続くかのように思えたJUDY AND MARYが10年、
しかも実質後半2年はあまり活動していないことを考えると、
もうJAMの倍の期間ということになる。
今年47歳を迎えるのに、
日本のガールポップを支えるYUKIの、
劣化知らずの「ガール」としての魅力は、まだまだ続くのだ。