90sJPOP文化論

~90年代に10代だったオトナたちへ 90年代にヒットした曲を具体的に取り上げながら、音楽的側面と言うよりもむしろ、時代・文化的な側面から雑考するブログです。

オバさんにならない生き方

【#047 私がオバさんになっても / 森高千里 (92年)】 の考察

アルバム「ROCK ALIVE」からのシングルカットされた森高千里の16枚目のシングル。。
オリコン15位、大ヒットとまでは行かないまでも、森高の代表曲として今でも多くのファンに愛されている。

この曲が、当時の10代にどのように映ったのかを考察してみたい。
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<能ある(森)タカは爪を隠してパンツを見せる>

89年に「17才」のヒットはあったものの、
なんとなく存在は知られていた森高千里を、一気に世に知らしめたのはこの曲だろう。

 


森高千里 『私がオバさんになっても』 (ライブ)

 

ミニスカートから惜しげもなく出る美脚。パンチラ。
何を隠そう、第1回ポカリスエット・イメージガールでグランプリを受賞した美貌の持ち主である。

アイドル冬の時代にアイドルらしく活動すること。
それは今思えば、
「シンガーソングライター森高千里」の才能を意識的に隠し続ける行為のようにも見える。

どこかよそ行きでPLASTICな声質にのせた切れ味のある言葉の数々。

 

・夏休みには二人してサイパンへ行ったわ
・私がオバさんになっても
・お腹がでてくるのよ

 

「秋元康が書きそうな」とでも形容したらいいのだろうか。
アイドルのイメージを客観視しながら、アイドルを演じ遊んでみせる芸当。
抽象的、感覚的にならずに具体的でインパクトのある言葉を並べながら、感情の動きは素直に伝わってくる。
作詞センスと呼ばずになんと呼ぼう。。

 

しかし、
派手な衣装にミニスカートにパンチラを目の前にして
作詞=森高千里。という表記に目を向ける男性はほとんどいない。

能ある森高は爪を隠してパンツを見せるのだ。

 

  

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  <音楽素養とセルフプロデュース力>

   

お嬢様じゃないの私ただのミーハー!(ザ・ミーハー)

悪いけど私は 歌がヘタよ(非実力派宣言)

 

などと歌ってはいても、
森高千里の音楽素養の高さは侮れない。

前述した作詞センスに加え、
3歳からピアノを習い
高校でドラムやベースを演奏していたというマルチプレイヤーだ。

 

 

 

徐々に
アルバムの楽曲でも自ら楽器を演奏するようになり、
次第に隠していた「シンガーソングライター・プレイヤー」としての側面にも注目が集まるようになる。

「私がオバさんになっても」のヒットのすぐ後に、
「渡良瀬橋」でちらりと見せるドラムと、シンガーとしての才能。


森高千里 『渡良瀬橋』 (PV)

 

真摯な側面を見せた一方で、
作曲も手掛けた「ハエ男」のリリースと、


森高千里 『ハエ男』 (PV)

 

徐々にアーティストとしての側面を見せていきながら、
「気分爽快」「ジン ジン ジングルベル」など
数多くのタイアップもやってのける器用さ。

類に稀な音楽スキルとセルフプロデュース力によって、
「モリタカ」は唯一無二の存在になっていくのである。

        

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 <オバさんにならない生き方>

 

ステレオタイプなイメージは壊したいというロックな熱さと、
それでいて「モリタカ」という偶像をまとい中身を見せないクールな側面。

 

そう。“森高千里”というのは、昔からどこか『他人事』みたいに歌っている人でした。自作の歌詞に描かれる世界観も『等身大』や『フィクション』というよりも、あくまで『他人事』。作詞やドラムを叩くことで見えた気になっていた『歌手としての自我』も、実はその裏に横たわる『他人事』という“森高”の性(さが)をダダ漏れにさせないための隠れ蓑だったのかもしれません。まさに正真正銘のコンセプト・アイドルにして、時間や感情に流されない超職人。*1

 

ミッツマングローブがそう指摘するように、
美貌・作詞能力・プレイヤー・歌手。
それぞれを持ち合わせながらその本質にはどこからも近寄らせない
「コンセプト・アイドル=森高千里」には劣化がない。

現代のアーティストでその感覚をいち早く見抜き
自らの楽曲に起用したのがtofubeatsだろう。


tofubeats - Don't Stop The Music feat.森高千里 / Chisato Moritaka (official MV)

 

2013年の「Don’t Stop The Music」では、
冒頭でPLASTICと書いた彼女の声質が、tofubeatsのサウンドに恐ろしいほどマッチしている。

 

 

50歳。

時代を超えて同じ精度を保ち続けられるのは、

音楽素養とセルフプロデュース力いう武器によるものだ。

 

アイドル顔負けの美貌の裏に隠し続けたその才能は、
変わらないどころか、時代を超えて進化し続ける。


オバさんになんて、なりようがないのだ。