90sJPOP文化論

~90年代に10代だったオトナたちへ 90年代にヒットした曲を具体的に取り上げながら、音楽的側面と言うよりもむしろ、時代・文化的な側面から雑考するブログです。

B面に見るアーティストの多面性。私的B面名曲5選/PART01

【interlude #003】 /2019.05.23_wrote

このブログでは主としてシングル曲(1曲)ごとに記事を書いているが、
今日はその2局目、B面の曲について書いてみたい。

 *************************************************

<通好みと、隠れた名曲の宝庫

 

なんやかんやで、30件。
10件ごとのinterludeを挟むと、この記事で33件目の記事になる。
私がブログを書いていることを知る友人は「まだ書いてんだ・・・」的な反応だが、
誰のためでもなくせこせこと書き続けられているのは幸せなことだ。
しかし、時間がない時の方が記事が書けて
時間ができると記事を書くことが億劫になったりするから不思議なものだ。


さて。
今日はB面の話。

 

物理的な裏表が存在するレコード・カセット時代の
A面からひっくり返した裏側サイドの曲たちには、
キャッチーに世に送り出すA面の曲とは違い
しっかり聴き込むコアなファンに向けた作り込みや
A面ではできないこと曲などが折り込まれるために、

 

「中島みゆきの「ファイト」って最初B面だったの?」(←実際は両A面)とか、
「松田聖子の「SWEET MEMORIES」もB面なんでしょ?」とか、
「PRINCESS PRINCESSの「M」って実はB面だったんだよねー」などなど、

昔から、
「通好み」と「隠れた名曲」はB面。と相場が決まっていた。

 

f:id:takuyasasaya:20190522180020j:plain

 

さて、
CD至上主義だった90年代
片面だけで再生するCDに突入した時点でとっくに死んでいてもおかしくなかったB面という言葉だが、
(実際、カップリング、c/wなどの記載は多く見られた)
もはや物理的な表/裏を越えて、
「アーティストの世界観における振れ幅」

のような意味として独立した価値を持ちはじめていたように思う。

 

今回はそんな、
いわゆる、シングルの2曲目としてクレジットされていた名曲たちについて触れたいと思う。
(基本的に、リカットシングルや両A面シングルの2曲目はのぞく)

 

 *************************************************

  <勝手に選ぶ90年代B面名曲5選PART01

 

01/「恋心 KOI-GOKORO」B’z 92年 (シングル<ZERO>のB面)

 

f:id:takuyasasaya:20190522180214j:plain

 ◉骨太ロックに対する軽妙さのバランス感覚。

B’zのファン投票で絶えずファンから圧倒的な指示を受けるこの曲。
A面のZEROと違いミドルテンポで緩やかなサウンド。
ライブにおける振付があることや、「松本」という歌詞などの遊びが盛り込まれ、
ファンにはたまらないであろうB’zのチャーミングな一面が垣間見える。
ノンタイアップで、ファン投票で収録曲が決まるTreasureまでアルバム未収録だったのもまた、
コアなファン心理をくすぐる要素になったのは確かだろう。

 

 

02/「デルモ」Mr.Children 97年 (シングル<Everything(It’s you)>のB面)

 

f:id:takuyasasaya:20190522180259j:plain

 

◉純粋ラブソングに対する醒めた批判精神。

女性目線で諦観にも近い醒めた視点で苦悩を歌ったこの曲。
活動休止前の最後のシングルとなったEverything(It’s you)のB面である。
皮肉を織り交ぜた言葉遊びと気だるい歌い回しのボーカルは、
A面の純粋無垢で誠実なラブソングとは全く違った質感を持っている。
爽やか路線でデビューし、社会性を持った楽曲を強く送り出してきたミスチルが休止前に作り上げた掛け算。
まさにミスチルの多面性を表すシングルと言える。

 

  

03/「夜と日時計」小沢健二 93年 (シングル<暗闇から手を伸ばせ>のB面)

 

f:id:takuyasasaya:20190522180414j:plain


◉シンプルなサウンドに見える王子様との距離。

渡辺満里奈との蜜月期に小沢健二が彼女のために書いた曲のセルフカバー。
A面の暗闇から手を伸ばせはシングルからのリカット曲である。
歌詞は男性目線に修正されている。
シンプルなアコギの音と朴訥と優しく歌い上げるボーカルは、
軽やかに振る舞う王子様としての側面とは違い、
まさにプライベート的な感覚で曲に対しての親密さを感じさせる。
売上は自身最低ということだが、皮肉なことにそれが「レアな名曲」としての評価を高めた部分もある。

 

 

04/「「オレンジ」SMAP 00年 (シングル<らいおんハート>のB面)

 

 

f:id:takuyasasaya:20190522180523j:plain

 

◉SMAP珠玉のバラードの裏表。


今でもSMAP解散になぞらえて多くのファンを魅了する、別れと感謝を歌ったこの曲は、
リリースのタイミングが木村拓哉の結婚報道と重なり、結婚式の定番曲となった「らいおんハート」のB面である。
曲調こそバラードとして大差は無いが、まさに表と裏。
すでに錚々たるアーティストが楽曲提供を手がけ、SMAPが歌う曲はただのアイドル楽曲ではなくなっていたのだが、
真逆のメッセージを一枚のシングルに封じ込めるところに、当時のSMAPの勢いと気概を感じる。

 

 

05/「君だけに夢をもう一度」サザンオールスターズ 92年 (シングル<シュラバ★ラ★バンバ SHULABA-LA-BAMBA>のB面)

 

 

f:id:takuyasasaya:20190522180617j:plain

まずA面に驚かされる。
「シュラバ★ラ★バンバ」。
独特の造語と韻を踏む表現で妖艶な世界を作り上げる楽曲を
ドラマ主題歌だった切ないラブソングの「涙のキッス」と同時発売することで
世に伝わるシングルとして送り出す離れ業はサザン以外にはなかなかできないだろう。
(※見事にオリコン1、2位を達成)
シングル2曲の振れ幅だけで北極と南極ぐらいの距離があるのに、
そこにB面として角度の違った名曲を送り込むなんて、ほぼ不可能に近い。
だが、それをやってのけるのが、やっぱりサザンなのだ。