90sJPOP文化論

~90年代に10代だったオトナたちへ 90年代にヒットした曲を具体的に取り上げながら、音楽的側面と言うよりもむしろ、時代・文化的な側面から雑考するブログです。

解散ソングの金字塔とすべてを俯瞰する視点

【#031 すばらしい日々 / UNICORN (93年)】 の考察 /2019.05.30_wrote

90年代前半を駆け抜けたUNICORN(ユニコーン)8枚目のシングル。
この曲を最後に解散したことで、ラストシングルとなった。(2009年に復活)。
脱退したリーダー川西へのメッセージソングとも言われている。
この曲が、当時の10代にどのように映ったのかを考察してみたい。

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<解散ソングの金字塔

解散。引退。ラストシングル。
そういう時にふさわしい曲というのはどんなものなのだろう。

 

調べたことはないが、
「ありがとうを伝えたい!」
「これからも新しい未来を歩き続けるぜ!」
というように、
ファンへの感謝や、これから始まる新しい未来への思いを歌うことが
一般的だし、主流であるような気がする。

当時人気絶頂だったバンド、ユニコーンのラストシングルは、
いわゆる一般的のラストシングルとは大きく違っていた。

 

www.youtube.com

 

すばらしい日々。
リーダー川西が脱退することにより解散したユニコーンのラストシングルは(当時において)
今でもユニコーンの歴史に燦然と輝く名曲である。

 

僕らは離ればなれ たまに会っても話題がない
いっしょにいたいけれど とにかく時間が足りない
(中略)
いつの間にか僕らも 若いつもりが年をとった
暗い話にばかり やたら詳しくなったもんだ

 

お互いを知り尽くした関係。
バンドブームを駆け抜けた先の葛藤。
過ぎ去っていく時間。環境の変化。

 

解散という答えを前にして
現状を美化することなく、
自分たちのいる現在地をどこまでも平熱の視点で見つめまっすぐに歌い上げる歌詞は、
切なくもそれでいて不思議と前向きな気持ちをくれる。

 

君は僕を忘れるから
そうすればもう すぐに君に会いに行ける


悲観ではない。諦めというのも違う。
ただ、「今ここ」から離れた所にしか、正解がないだけなのだ。
彼らの目線は、解散という現実を
もっとその先にあるであろう、
それぞれの道を進んだ未来から現実を見据えている。

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  <バンドブームとすべてを俯瞰する視点>

 

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80年代終わりから、90年代初頭。
時代はバンドブーム。
ブルーハーツやジュンスカと並び人気を博したユニコーンは、
そのルックスや振る舞いから中高生にアイドル的な人気を博していたが、

 

歌の内容はというと、
「大迷惑」「働く男」「ヒゲとボイン」など
働くサラリーマンたちの悲哀をコミカルに歌い上げるものが多く、
それは中高生向けの憧れというよりも
妙な社会性を持ち合わせたおっさんのような印象でもある。

 

若者の悪ふざけのように面白おかしくはしゃいで見せても、
片一方では、社会を俯瞰で見据えているような落ち着き。

 

わずか、6年。
今考えるとそんなものかと驚くほど短い活動期間だが、
ユニコーンの存在は他に類を見ない。


音楽性の違うメンバーそれぞれによる作詞作曲、さらにはボーカルという多彩さが放つ、
バーリトゥードのような音楽でも、
やはりそれをユニコーンたらしめているのは、
音楽センスに加えて、そんなどこかで全てを俯瞰している落ち着きなのかもしれない。

 

しかし世間が騒ぎ立てるブームの中で
20代前半でデビューした若者とは思えないこの感覚。
やはり特別という他ない。

 

 

 

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 <16年の歳月を超えて>

 

2009年。

すばらしい日々での予言?のように、
それぞれの道を歩き続けたメンバーに再結成の日が訪れる。
その間、16年。
最初の活動期間の倍以上である。

 

伝説のバンドの復活ということで、
過剰に力が入ってしまいそうな所だが、
そこらへんは、やはり、ユニコーンである。

 

 

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(確かこの広告で復活を宣言して「蘇る勤労」ツアーに突入しました)

蘇る勤労。

働く男たちが、働き始めたのだ。
すばらしい日々が帰ってきた。

時代はだいぶ進んだが、
おっさんのような落ち着きを持った人たちが、リアルなおっさんになったくらいで、
ユニコーンらしさは、変わらない。

 

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