90sJPOP文化論

~90年代に10代だったオトナたちへ 90年代にヒットした曲を具体的に取り上げながら、音楽的側面と言うよりもむしろ、時代・文化的な側面から雑考するブログです。

矛盾を内包する声と魔力

【#033 サヨナラ / GAO (92年)】 の考察 /2019.06.13_wrote

ユニセックスなルックスとハスキーボイスで一世を風靡したGAOのセカンドシングル。
オリコンチャート100に47週連続ランクインし続けるロングセラーとなり、紅白出場を果たした。
この曲が、当時の10代にどのように映ったのかを考察してみたい。

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<GAOのボーカルの不思議な魔力>

 

 

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POLICEを彷彿とさせる感傷的なイントロ。
一聴すればそれとわかる独特のハスキーボイス。
歴史的ヒットソングなどで振り返られることは少なくても、
この時代にJPOPを聴いていた人でこの曲を知らない人はいないだろう。


「サヨナラ」


GAOのセカンドシングルながら、
120万枚を超えるミリオンヒットを記録した曲である。

もちろん、ドラマ主題歌に起用されたこと*1
ヒットの要因の一つなのは間違いないだろうが
それでもおそらくほとんどの人が、
GAOって、誰?
という状態だったように思う。

 

 

しかしそんな情報などなくとも、それを凌駕するのが歌の存在感である。
筆者もドラマは見ていなかったが、
どこかの折にラジオで聴いて、気がつけばぼんやりと口ずさむくらいになっていた。

GAOのボーカルの不思議な魔力。

その後メディアに登場するようになっても、
その中性的なルックスで、女性ファンからのカッコいいと注目を集めるなど、
ミステリアスな印象はむしろ増していった。

ミステリアスな存在でありながら
47週連続(ほぼ1年!)チャートに居座り続けるロングヒットとなったのは、
この曲の懐かしいような心地よさと切なさが多くの人の琴線に触れたからではないか。

   

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  <気矛盾を全て内包する声と雄弁さ>

 

手のひらから伝わる愛
心をとかした
名前のない時間の中で
二人夢を抱きしめてた
何も失くさないと 信じていた
あの頃に

 

 

改めて聴いてみても
サヨナラという言葉の持つ悲しさと、
それでも前に向かっていく決意のようなものが同居して聞こえてきて、ヤられる。

  

静かな展開と心地よいループ感に配された、
短く研ぎ澄まされたシンプルな歌詞。


文字数が少なくても、
「(手の)ひらから」「名前のない」などのせり上がり方や、
「(何も失くさ)ないと」の後の呼吸など、
一音一音に感情が乗り、情報量は何倍にも膨れ上がる。

 

Wikipediaによると、
デビュー前、発生中に声を潰してしまい、ついた名前だという「GAO」。
痛々しく、突き刺さるように尖っていて、繊細で、力強い。
そんな矛盾を全て内包するような他に類を見ない声によって、
「ラ」、の1音でも、雄弁になるのだ。

 

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逆説的ではあるが、
カバーを聞くと(それぞれにいいカバーではあるが)、
原曲の「声」を求めてしまいたくなるのが、いい証だろう。

 

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(佐藤竹善ver. / 全体のアレンジを加えマイルドな印象に)

 

続こううたう

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(柴咲コウver. / 原曲に近いアレンジで柴咲コウのボーカルを立てながら透き通った印象に)

※↑個人的にはこの方向なら中谷美紀にカバーしてほしい気がします。

  

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 <女カッコイイの現在形>

 

失礼な話だが、この記事を書いている流れで、
GAOが活動を続けていることを知り、驚いた。

 

簡単にその後の経歴をまとめておこうと思う。

さよならのヒット以降、
96年に活動を休止し、ニューヨークへ。プロデュース業に専念。
00年からは「REAL”G”」名義でラッパーとして活動。
08年にGAOとしての活動を再開。
また
13年に「Dusty & Black tie」というバンドを結成して活動しているとのこと。

 

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齢、54。
ますますかっこいい女性になっていることに驚きである。

 

   

 

 

*1:日テレ系列「素敵にダマして」の主題歌