90sJPOP文化論

~90年代に10代だったオトナたちへ 90年代にヒットした曲を具体的に取り上げながら、音楽的側面と言うよりもむしろ、時代・文化的な側面から雑考するブログです。

愛される才能と加速するネオテニー

【#036 愛の才能 / 川本真琴 (96年)】 の考察 /2019.07.11_wrote

川本真琴のデビューシングルにしてスマッシュヒットを記録した曲。
COUNT DOWN TVのエンディングテーマに起用されたこの楽曲は、岡村靖幸がプロデュースを手掛けた
この曲が、当時の10代にどのように映ったのかを考察してみたい。
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<ガールポップに吹くギター女子旋風>

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あの娘にばれずに 彼にもばれずに kiss しようよ
明日の一限までには 何度も kiss しようよ
愛の才能ないの 今も勉強中よ「SOUL」

 

それにしても文字数の多さ。
音の数に対して散弾銃のごとく降りかかる言葉の数々。
小室サウンド全盛期に、
全力でギターをかき鳴らす存在感一際目を引いた。
R指定もびっくりのライミングに近い早口で
まくし立てるのは、当時としてはなかなか新しかったように思う。
それが、川本真琴のデビューだった。

 

アクの強い岡村節をポップに仕上げるボーカル力と、
ギター片手にまくし立てる疾走感。
そこにボーイッシュな出で立ちとキュートなルックスが加わり、
愛の才能はあっという間にヒットチャートに躍り出る存在となった。

  

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  <加速するネオテニー>

一見するとその外見から
アイドル的な人気に偏りがちな川本だが、
そこは、
お飾りのボーカルとしてフロントを務めていた
同時代のボーカルたちとは一線を画している。
デビューこそ作曲は岡村靖幸だが(作詞は共作)
セカンドシングルからは、作詞作曲を手掛けており、

 

そこから放たれる独特の言葉回しは
ビジュアルありきで共感を狙った路線の、
ちょっと男に媚びたりおセンチに寂しい感じを伝える楽曲とは大きく異なる。

あたしまだ懲りてない 大人じゃわかんない
くるしくてせつなくて見せたくて パンクしちゃう
(1/2)

 

他人だよね?(DNA)

 

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ざっくり言うと、ツンデレ。
もうちょっと言うと、奔放さと、強さ。
恋愛における女性の思いを
時に男を戸惑わせるレベルでダイレクトに伝えながらも、
それでいて決して媚びる印象のない上から目線の混ざったワガママっぷり。

 

その危ういまでの不安定さが
主語「あたし」を地でいく彼女の幼児性と相まって
楽曲の魅力を拡大させていくのだ。

(主語あたしのイメージでブレがないのは、他にはaikoぐらいのもんですかねぇ)。

    

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 <愛される才能>

 

彼女の魅力の一つである
不安定さと言うのは、諸刃の剣でもある。

いくつかのヒット曲を残したのちに、
徐々にメジャーシーンへ姿を現すことは減っていき
数年ぶりの話題が突然のお騒がせ発言であったりしたが、
つい先日、9年ぶりとなるアルバム「新しい友達」をリリースを発表した。*1

 

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峯田和伸、七尾旅人らを中心とした
コラボレーション相手の豪華さたるや。

デビューから20数年。
メディアで見かけることは少なくなったが、
それでもこれだけのコラボとアルバムリリースが決定するのは、
自由なところに身を置いて奔放に生きる彼女の、
その才能を放っておかない人たちがいるからなのだと思う。

 

  

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