90sJPOP文化論

~90年代に10代だったオトナたちへ 90年代にヒットした曲を具体的に取り上げながら、音楽的側面と言うよりもむしろ、時代・文化的な側面から雑考するブログです。

冬の女王とハイキーのマリアージュ

【#007 ロマンスの神様 / 広瀬香美 (93年)】 /2018.11.08_wrote

93-94年の冬のアルペンCMソングとして、オリコンチャートに彗星の如く現れた広瀬香美の大ヒット曲。
3枚目のシングルにして冬の女王の称号を獲得した彼女の出世作。
この曲が、当時の10代にどのように映ったのかを考察してみたい。

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<ホイチョイ終焉後のゲレンデ模様>

10代前半の私がゲレンデを体験したことなどなく、
当時のゲレンデのイメージは、かなりざっくり言ってしまうと、
ユーミンとねるとん紅鯨団によって培われたものだったと思う。


つまり、苗場リゾートに代表されるようなバブル的ゲレンデ観。
そこに、バブル~月9を中心に描かれた女性主導の恋愛観が重なるのが、
アルペンのCMであり、この曲だ。

 

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・週休二日 しかもフレックス…
・年齢住所 趣味に職業…
・土曜日遊園地 一年たったらハネムーン…

 

バブルは弾けても、音楽業界はまだまだバブルだと言わんばかりの様子の歌詞が
当時の大人たちにはどう映ったのだろうか。
リアリティの無さに笑っていたのか、リアルさに幻滅していたのか。

 

ただ、当時中学生の私には、
このあっけらかんと並ぶキッチュでコミカルな歌詞が
意味を超越して、大人の喜劇的側面と社会人に対する漫然とした憧れを映し出していたのだ。

 

 

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 <圧倒的キャッチコピー、冬の女王>

カラオケでこの曲を歌う女子が
後半のサビあたりで「もういいや」と演奏中止を押す姿を

何度か見たことがある人は私だけではないはずだ。


・・・いやぁ、高い。

 

 

 

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男女問わず、高音域のボーカルがもてはやされていた90年代においても、
ファルセットでもなく、声色を変えるわけでもなく
力を入れて引っ張ったままにこの音域を出す人はあまりいなかったように思える。

 

ハイキー×冬という発明。

 

それにしてもいったい誰が言い出したのだろう。「冬の女王」
もちろん、ディズニー映画ではない。広瀬香美のことだ。
当時私はまだ中学生だったが、
ラジオのカウントダウン番組のチャートでこの曲が流れるときに、
既にナビゲーターがこの異名を言っていた記憶がある。*1

 

 

でも・・・
いくらアルペンCMソングが決まったからと言って、


それまでのシングルは、
「愛があれば大丈夫」「二人のBirthday」の2枚。

 

前者は映画のタイアップで世間認知は獲得していたものの、
「冬」要素も「女王」要素も見当たらない。
冬の女王なんて突然言われても、
そんなの嘘 だと 思いませんかー?
と歌いたくなってしまうようなキャッチコピーである。

 

が、しかし。
ユーミン以降空きが出た「ゲレンデぴったりソング」を埋めるべく
このポジションを、強烈な力技で作り上げるのが当時の音楽業界。


かく言う私も、
今でもザラっと記憶に残るぐらいの違和感を持ちながら、
数年前に見た映画、「病院へ行こう」でかかっていた曲などすっかり忘れて *2
「あぁ、この人は冬の歌を歌うプロフェッショナルなのだな」と思ったものである。

 

かくして広瀬香美は(誰の意志かは定かではないが)冬の女王に君臨したのだ。

 

 

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 <名実ともに、冬の女王へ

その後も彼女はその後も冬の女王として公務をまっとう。
テーマソング継続期間中のシングルとしては、
実にリリースしたシングル21曲中アルペンCMソングが15曲という「冬密度」で
2002年までアルペンのテーマソングを継続。

 

タイアップのシングルリリース頼りとも思えるが、
ゲレンデ需要が減ったり、JR ski skiがキャンペーンが終了する中、
(CMであること問わず)冬の代表曲を描き続けた。

 

冬の女王誕生から、20余年。
ap bank fesに出演した広瀬香美。

 

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私生活や事務所問題など様々をくぐり抜けて
自ら冬の女王を名乗る広瀬香美の姿が好ましい。

 

誰が言い出したかわからないこのキャッチコピーを、
自らの音楽で相応しいものにしていったのはやはり彼女自身だったのだ。

 

きっと今でも冬が来るたびに誰かがFallin' Loveするのだ。

ロマンスの神様 どうもありがとう

 

 

 

 

*1:千葉県育ちの私は、bayFMでバッキー木場さんがそのように言っていたと記憶しています

*2:「愛があれば大丈夫」が主題歌