90sJPOP文化論

~90年代に10代だったオトナたちへ 90年代にヒットした曲を具体的に取り上げながら、音楽的側面と言うよりもむしろ、時代・文化的な側面から雑考するブログです。

アイドルからの逸脱と等身大のリアル

【#034 セロリ / SMAP (97年)】 の考察 /2019.06.20_wrote

SMAPの25枚目のシングル曲。前年にリリースされた山崎まさよしのカバーである。
草彅剛主演ドラマ「いいひと。」の主題歌でもあった。
この曲が、当時の10代にどのように映ったのかを考察してみたい。

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<アイドルからの逸脱の布石>

 

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(こちらオリジナル) 

 

 

96年。当時筆者が聞いていたBAYFMでパワープレイされていた曲。
それがこのセロリである。(確かイントロからAメロの掴みがかかっていた)
そのタイトルの違和感と耳残りのよさでものすごく記憶に残っていたわけなのだが・・・

 

まさかのSMAPである。

 

色褪せない有名曲ならまだしも、
ブレイク間近とは言え当時
あまり知られていなかったアーティストの楽曲をシングルとしてカバーする。
勇気ある選曲と言っていいだろう。


しかしこれが、
それまでのアイドルグループ像からの逸脱の布石となる。

 

それまでのジャニーズの曲は、
なんとなく知っていても、
どこか、「女性ファン」や「追っかけ」だけが聞くもので、
男が聞いていると公言するのは憚られる要素があったように思うのだが、
この曲を境に、
男が歌ったりも聞いたりしても許されるSMAPという印象は強くなっていく。

 

テレビでの活動においても
前年に冠番組「SMAP×SMAP」が開始。
バラエティと音楽を軸にした構成で、
カジュアルでエンターテイメント性を押し出し、
徐々に男性ファンにも受け入れやすい存在になってきた時期と一致する。

 

テレビでは芸人顔負けのお笑いを披露しつつ、
音楽ではアーティストへのリスペクトを全面に押し出すなど
真摯に音楽と向き合う姿勢を見せることで自らのアーティストイメージを強くしていく。

 

「セロリ」の楽曲セレクトには、
5人の個性を存分に発揮しSMAPを唯一無二の存在に仕立て上げた、
マネージャーのそんな辣腕っぷりが透けて見える。

 

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  <等身大のリアルと生活感>

 

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育ってきた環境が違うから
好き嫌いはイナメナイ
夏がだめだったり セロリが好きだったりするのね

 

 

広い意味で言えば、
男女の恋愛模様を歌うラブソングということになるのだろうが、
いわゆるそれまでのアイドルが歌うようなそれとは違う、
生活感や、個人的な印象を感じる曲だ。

  

下北沢や高円寺あたりにいそうなカップルの、
日常のちょっとしたズレに感じる理想と現実のギャップが
山崎まさよしの独特のユーモアと言語感で軽やかに描かれている。

 

性格曲げてまで
気持ちおさえてまで
付き合うことないけど

 

そんな等身大のリアルを歌うことで、
SMAPが
女性にはより身近で親しみのある存在に。
男性には少し同じ想いのわかる人たちの歌として認識されるのだ。

他のアーティストの曲を歌う
(あるいは有名作家等に楽曲を書き下ろしてもらう)という名の共犯関係によって、
SMAPは無限の色を手にし
「アイドルのSMAP」から「SMAPはSMAP」でしかない存在に変わっていったのである。

 

   

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 <SMAPの歩んだ道のり>

 

中居・木村・稲垣・草彅・香取。
名字を5つ並べただけで漂う圧倒的な存在感。

 

サッカーで言えばブラジルのように、
個人としてみれば全員がファンタジスタであり、
チームとしても掛け算で最高のパフォーマンスを発揮する。

 

SMAPが存在したことによって、
男性アイドルグループのあり方は大きく変わったように思う。

 

ここで書いたようにSMAPが通過していった道のりを
後からああだこうだと勝手に言うことはできるが、
彼らが本質的にすごいのは、
もともとなかった道を切り開くチャレンジをし続けたことだと思う。

 

たえず、今までとは違うやり方を選び、
そこへの努力をし続けたことが
優秀なスタッフや協力者を呼び寄せ、ファンを呼び寄せ、
5人の個性をここまで光らせることになったのではないだろうか。

 

いやぁ、
価値観はイナメナイのかもしれないけど・・・
やっぱり、5人揃ってるとこ、見たいなぁ。