90sJPOP文化論

~90年代に10代だったオトナたちへ 90年代にヒットした曲を具体的に取り上げながら、音楽的側面と言うよりもむしろ、時代・文化的な側面から雑考するブログです。

はしゃぐ夏に隠された切なさ

【#039 サマーヌード / 真心ブラザーズ (95年)】 の考察

桜井秀俊とYO-KINGからなる真心ブラザーズの11枚目のシングルであり、日清食品「サマーヌードル」のタイアップ曲。
オリコンチャートは81位とタイアップ全盛期において大ヒットとは呼べないこの曲だが、夏の名曲として今なお多くの人にカバーされている。
この曲が、当時の10代にどのように映ったのかを考察してみたい。
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<はしゃぐ夏に隠された切なさ>

 

神様にもバレないよ 地球の裏側で
僕ら今
はしゃぎ過ぎてる 夏の子供さ
胸と胸 からまる指
ウソだろ 誰か思い出すなんてさ

 

夏の定番曲と言っていい。
真心ブラザーズの「サマーヌード」(のちにアレンジを変え「ENDRESS SUMMER NUDE」)。

 


真心ブラザーズ 『サマーヌード』

 (抜けにいるデビュー前のPUFFYが若いです)

 

花火・海・・・と夏らしい要素満載、
駆け上がるように盛り上がりサビへとつながる疾走感のアゲっぷり、
とにかくはしゃいでキラキラした感じは
まさに夏の定番曲のセオリー通りと言えばそうなんだが、
ただウェイウェイはしゃいでいるわけではないのだ。

 

その髪の毛で その唇で
いつかの誰かの感触を 君は思い出してる

 


夏にノリノリで過ごしてたら、夜振られたりなんか思い出したりしてちょっとおセンチになったよ。
みたいに夏のウェイウェイの中に切なさを混ぜ込んだような歌詞はごまんとあるが、この曲は違う。

 

あえて形容するならば、
切ないからはしゃぐしかない。と言うニュアンスに近い。
はしゃいでいないと、バランスが保てないギリギリが生み出すその瞬間の輝きなのだ。
ずっとは続かないそんな瞬間を過ぎ去る夏と共に描く曲。

 

夏がキラキラすればするほど、切なくなる。

 

発売から四半世紀が経とうとしている今も
数多く歌われ、愛されるこの曲には、そんな複雑な魅力があるのだ。

 

 

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  <真っ当な大人のカッコ良さ>


もはや真心の代表作ともなった「サマーヌード」だが、
発売当初は、それほどのヒットというわけでもなかった。
むしろラジオなどでは今の方が再生されていると言ってもいいくらいだ。

 

そもそも真心ブラザーズが世間一般に知られるようになったのはいつ頃だろう。
個人的にはいろんな意味で話題になった「拝啓、ジョン・レノン」あたりからじゃないかと思うのだが、
人によっては
「どか~ん」ってみんな知ってるでしょ!とか、
「モルツのCM」歌ってた人だよ?有名でしょ?と言い出しそうだし、
(筆者は曲は知っていても当時はアーティスト名までは知らなかった)

 


【CM 1992-94】SUNTORY MALT'S 30秒×11

  

その一方、通過してこなかった人には全く耳馴染みのないアーティストという人もいそうで、
そこが両極端に分かれているあたりが、
このアーティストの特異なポジションを確立している節もある。

知る人ぞ知る。というほど尖ってはいないが、
毎回チャートを賑わす国民的キャッチーさに偏重することもない。

長年、第一線でい続けるため一定数のファンを着実につかまえながら
客目線やコンプライアンスに縛られず嘘偽りない言葉を生み出し、届ける。

言うなれば、肩肘張らずに社会に中指立てず、きちんと、楽しく、生きる。
そんな真っ当な大人のカッコ良さを体現したそれが、真心特有のロックンロールになっているのじゃないかと思う。

      

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 <カバーする名曲/される名曲>

2000年を超えてから加速度的にカバーが増えているサマーヌードは、
もはや時代を超えた名曲と言っていい。

matome.naver.jp

 

デビュー30年を超え、
今なおコンスタントに活動を続ける真心ブラザーズ。

 

今ではすっかり「カバーされる側」の立場だが、

筆者的には、吉田拓郎の「流星」のカバーが最高だと思う。

 

 

流星

流星

  • 真心ブラザーズ
  • ロック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 


初期にRCや吉田拓郎など、自分のルーツ曲をカバーしていた真心。
50歳を超えた二人がどんな名曲を選び、どんな風に歌い奏でるのか。カバー曲も聴いてみたい気もする。