90sJPOP文化論

~90年代に10代だったオトナたちへ 90年代にヒットした曲を具体的に取り上げながら、音楽的側面と言うよりもむしろ、時代・文化的な側面から雑考するブログです。

音階を駆け上がり続ける麻薬性

【#044 HOWEVER / GLAY (97年)】 の考察

当時飛ぶ鳥を落とす勢いでヒットを飛ばしていたGLAYの12枚目のシングル。
自身初のミリオンセラーを記録した。
この曲が、当時の10代にどのように映ったのかを考察してみたい。
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<音階を駆け上がり続ける麻薬性>

  


GLAY / HOWEVER

 

どれだけの男子が競うように歌っただろう、この歌。この高音。
次から次へと果敢にカラオケのリモコンを押しては
特攻隊のように挑んでいき、最後のサビ、

 

あなたを彩る全てを抱きしめて
ゆっくりと 歩き出す

 

で見事に自滅する姿は全国のカラオケ店でよく見られた景色だろう。

 

ピアノとストリングスの美しい旋律による優しさ溢れるスタート、
バンドらしさを出しながらも、
静かに静かにサビへの飛翔をぐっと我慢し続けるようなAメロ、Bメロ。
爆発をためにためてようやく放たれるサビ。
さらにそこから、
二番のサビ、大サビへと過酷な山登りのように登り続けていく構造は、
さながらエスカレートの歯止めが効かなくなった高音のインフレである。

 

音階を駆け上がり続けるこの麻薬性が、
当時盛況だった音楽番組やラジオを通じて街に蔓延するのだ。
多くのGLAY中毒者が出るのも無理はない。

すでに全作「口唇」で1位を記録しメジャーシーンでその活躍を知らしめていたGLAYだが、
この曲で初のミリオンセラーを記録。
その後2ヶ月を待たずして発売された
アルバム「REVIEW」(発売初週227万枚!)にも同曲が収録されているので買い控えた人がいることを考えると、恐ろしい売れっぷりである。

「HOWEVER」、そして「REVIEW」
この二枚のリリースがシングル5作連続ミリオンへの足掛かりとなったのは確かだ。
かくしてGLAYは日本を代表するロックバンドとしてのポジションを確立したのだ。

 

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  <ビジュアル系の誠実と堅実>

 

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X JAPANに端を発し、BOOWYを経由しながら成熟していったビジュアル系ロックバンド。
(※解釈は諸説あります)

90年代にも数多くのバンドが台頭していたが、その山頂は、しばらく空席だったように思う。
黒夢、LUNA SEA、BUCK-TICK、等・・・
音楽的な激しさを持ち合わせるバンドは広いファンには受け入れられるのは難しく、
T-BOLAN、WANDSといった
ポップロック路線のバンドが一時的に台頭するも天下まではたどり着かなかった。 

 

 

 

そこへ現れたのがGLAYである。
8thシングル、グロリアスで初のTOP10圏内であるオリコン4位を獲得。

 


GLAY / グロリアス

 

髪型や髪の色などビジュアル系の派手さは継承しながらも
スーツでしっかりと決めた誠実な立ち振る舞い。

HOWEVERにおいても、

 

暗闇を駆け抜ける勇気をくれたのはあなたでした。

 

およそそれまでのロックバンドからは想像のつかない丁寧な言葉遣い。(ですます調!)
BOOWYが「お前」、T-BOLAN、WANDSが「君」と歌う相手を
「あなた」と歌い尊重する気分を持ち合わせる感覚。


時代の変化を敏感に察知しながら、
絶えず誠実であろうとするその姿勢こそが
GLAYが多くの人に愛され国民的バンドにのし上がれた要因の一つなのかもしれない。

      

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 <バンドという民主主義>

 

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20万人ライブ。
シングル売上2000万枚。
ミリオンセラー5作。

 

数々の記録を打ち立ててきたGLAY。
今でも第一線で活躍しているものの、
当時を思い返すと少し物足りなく思う人もいるかもしれない。
確かにセールスという意味では当時ほどのインパクトを残すのは難しいだろう。

 

デビュー、25周年。GLAYがまた動き出す。

 

バンドとは、民主主義である。
GLAYとは、民主主義である。

 25周年のGLAY DEMOCRACYからの一節である。*1


何かに中指立てるようなロックが存在しづらい時代にはなった。
しかし、今のGLAYからはひとつ肩の力が抜けた大人の余裕みたいなものが感じられる。
それはやはり、あの走り続けた時代があったからこそだろう。

 

じいちゃんになっても4人でワイワイバンドができて、
ときどき家族と贅沢できればそれで十分幸せなんだって答えにたどり着いた。*2。。

 

一過性の売上や他人の評価に左右されず、
音楽に、人に、自分に誠実に音楽作りを続ける彼らを、
同じ時代に生きたファンたちはきっと追い続けるだろう。